カスカII型で面白いことがあったりしたが、エクトラのマガジンねたの続き
である。
しつこいようだが、この日記を読んだ方がどのようなアクションを起こしても、
それは「自己責任で行うものであり、筆者は一切の責任を負わない」ということを
理解して欲しい。

いよいよマガジンを外す。ボディ正面の2個のネジを回す。
ここまででもかなりの説明と確認をした。
前日記を読んだ人の大半は、きっとその段階でエクトラのマガジンを外すことを
止めるに違いない。
それをも克服した根性のある人は、ボディ両側にあるネジを同じように回して
いよいよマガジンを外す。
両側を同じように!を強調するのは、以下のような理由がある。
・片方ずつ回すと、ボディとマガジンが微妙に傾いたり、ガタが出てしまう
ことにより、前述の勘合部分の角度が狂ってしまうことがある。
・同じように回すということは、マガジンをボディと平行に後ろを抜くことが
できるのである。
平行に抜くということは、軽く後ろに引いたときに「あ!これはマガジンが
外れない!(大汗)」となったときに、脱着を断念して元に戻すことが
できる可能性が高いのである。
戻すことも出来なくなれば、それはもう最悪である。
ネジが完全に外れたところで、静かにマガジンを後ろに抜く。

無事にマガジンを外したところ。ここまででかなり精神的疲労が・・
何もトラブルがなければ、このようにマガジンが外れる。
考えてみると、他の「ひょっとして勘合部分の調子が合わないかもしれない」
マガジンと交換することは、100害あって1利なしなのだ。
要するに、エクトラのマガジン脱着は「儀式の伝承」のようなものである。
そう「オレはエクトラを使っているんだ!(汗)」という満足感だ。
確かに、こういうカメラを所有しているのであるから、こういう「一種の恍惚感」
は重要ではある。
ただし、リスクは大きい。
私のように、定期的にチェックや整備が必要な個体を所有していない限りは
お正月に行う儀式として継承するくらいが無難だと思う。
装着はこの逆をやるだけである。
何もトラブルがなければ・・元に戻る。
さて、いよいよ「トラブル事例」である。

装着してみると、なんと巻き上げが出来ない!原因は勘合部分の傾き。
今回の一連の動作を撮影し、さて・・とマガジンを戻してみたら巻き上げ
が出来ない。
私の場合、さすがに17年も使っている(遠い目)なので、すかさず「これは
いかん!(汗)」と気が付き、だましだましマガジンを外した。
実は、このような状況になると、通常はマガジンは外せないし、ちょっとでも
固く引っかかっているようならば、マガジン下部を分解して外すことを
お勧めする(もっとも、奨められても・・どいう人は多いだろうが)
外してみると、このように勘合部分が傾いていた。
こういうときの対処としては、本体側の勘合部分を回してシャッターをチャージ
し、レリーズして正しい位置に戻すことになる。
正しい回転方向はラチェットがきちんと作動(軽く回る側)であり、間違っても
反対に回してはいけない。
私がこのときに行った作業の失敗は、以下の通りだ。
本来の装着手順:
・マガジンをはめてネジを「マガジンが動かない程度」に固定。
・ロックのスライドをUNLOCKにスライドする。
・さらにマガジンのガタがないかを確認し、ネジを回す。
今回の失敗した手順:
・マガジンを装着してネジをカッチリとするまで回す。
・あれ?固いぞ・・と思いつつUNLOCKにスライド。
微妙なことだが、こんな些細なことでEKTRAがきちんと動くか、動作不能に
なり、最終的には故障(破壊?)となってしまうのである。
エクトラを使う限り、多少のトラブルは発生する。
そうしたときの対処に慣れて、正しいアクションを学んでいくことがクラカメの
楽しさでもある。
さて、なぜこのようなトラブルが発生するのか?
それはKODAK EKTRAの機構に原因がある。

35mm版のマガジン交換機 Rollei SL2000Fのマガジンの勘合部分
同じマガジン交換式のローライSL2000Fの勘合部分である。
マガジンを脱着する際には、マガジンは複雑な動きをして本体勘合部分から
スライドして外れる。
そして、本体側も勘合部分はバネで上下し、柔軟に合わさるようになっている。
ちょっと機械的知識がある人ならば「軸を接続して回す場合は、きっちりと精度
を出してガッチリ固定するか、ルーズな接続を許すための緩衝機構を入れる」
と考えるべきである。
そればエクトラにはないのである。
では、勘合部分の不整合によってどこが具体的にダメージを受けるのか?

本体側のフィルム巻取り部のギアを外したところ。勘合部分のラチェットの
部品(黒いものと細い線バネ)が見えるだろうか?
エクトラは、マガジン交換を可能にするためか?各部に多くのラチェットを使用
している。
その中で、もっとも破損しやすいのは、当然もっとも力がかかり、かつマガジンの
脱着により衝撃を受けるこの部分のラチェットである。
シャッターの不調、マガジン脱着時の衝撃・・・などにより、ラチェットがズレて
角度が変わってしまうくらいなら「ちょっと冷っとする」くらいで済むが、この細い
バネ(がかなり頼りなくラチェットを押している)が外れたり、最悪はラチェットの
金具の先端(かなり尖っている)が欠けてしまい、ラチェット機構そのものが
作動しなくなってしまうことがあるのだ。

エクトラのラチェットの中で、大きくて判りやすいのが巻き上げ部分のもの
マガジン後部のレバーと連結されているラチェットが最も判り易いので
画像をUPしておく。
(くれぐれも「見て見たいから」と分解はしないように!)
機構としては妥当ではあるものの、強度的に不安な作りでそれを実現している
ところが、コダック エクトラの危ういところなのである。
とはいえ、構造を理解して、壊すようなことを避けて使えば良いだけのことである
から、ネガティブに考える必要はない。
今時購入できるエクトラは、なんらかの整備はされているであろうし、壊れたら
修理してくれるところもある(修理代は本体価格を越えるにしても)ので、積極的
に撮影に供することは可能であるとは思う。

Ektar90F3.5 F=1:8 ネガをスキャン
90mmを使った例である。
残念なことに、このときは空が微妙にガスっていたので、蒼くならなかった。
いずれ、ポジで再トライしたいものだ。
最近のコメント