« 2010年2月 | トップページ | 2010年4月 »

2010年3月

2010.03.28

KODAK EKTRA用のEktar90F3.5

私はコダック エクトラのレンズは3種類所有している。
Ektar35F3.3、Ektar50F1.9、Ektar90F3.5である。

Ektra3_20100328
 エクトラにEktar90F3.5を装着したところ。

エクター90F3.5は手に取ると軽い。
標準レンズと比較すると以下の通り。
 Ektar50F1.9 343g
 Ektar90F3.5 330g
50F1.9は手に取るとずっしりするのだが、こうして実測してみるとそれほど
違わないのにはちょっと驚いた。

さて、重さの話はともかくとして、エクトラのファインダーは1941年のカメラ
としては画期的な「パララックス補正」が付いている。
中を開けて見ると、腕儀式の枠が上下するだけなのだが、これだけでも
かなり違う。
さて、その機能を信用して2~3mの距離でチョコ君を撮影した。

Ektra4_20100328
 KODAK EKTRA Ektar90F3.5 1/1000 F=1:5.6

う~ん、やられた!という感じである。
このスキャン結果を見てからエクトラのファインダーを確認すると、どうも中の腕木が
動いていないようである。
まあ、これで気が付いたから、次回の撮影から気をつければよいだけだ。
クラシックカメラの多少の機能がダメになっているからと言って、やれこれはダメだとか
修理だ!とか騒ぐのはナンセンスである。
もっとおおらかに、楽しむ方向に考えるべきである。

Ektra5_20100328
 KODAK EKTRA Ektar90F3.5 1/1000 F=1:5.6

Ektra7_20100328
 KODAK EKTRA Ektar90F3.5 1/500 F=1:8

この日は天気に恵まれたので、「空の青が蒼く写る」の感じが実感できたのが
嬉しい。
今年になって、フジがフィルムの品種を絞ることを発表し、私が撮影結果(ポジ)を
現像に出すと3日もかかって帰ってくる・・・など、銀塩の世界はいよいよ厳しくなって
きたことを実感している。
銀塩が無くなるのを防ぐためにも、これからもクラカメの撮影を楽しんでいこうと
思っている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.03.21

CASCA IIのファインダー

久々のCASCA IIネタである。
たまに快晴になったときに、ポジで撮影している。

Casca3_20100321
CASCA II Culminar50F2.8 1/500 F=1:5,6

ポジの現像に時間がかかるので確認にかなり時間がかかるのであるが、
どうやらこの個体の調子は良いようで、写りはしっかりしている。

Casca1_20100321
 CASCA IIと同年代に存在していたドイツのレンジファインダー機

CASCA II型が登場したときに、ドイツに存在していたレンズ交換式フォーカル
プレーン機を揃えてみた。
左からライカ(残念ながらIIIcではないIIIf)、コンタックスII(1936)、CASCA II(1949)
である。
Contaxについては、1950年にIIaが発表されているので、そちらが良いのかも
しれないが、当時はII型が主力であったと思われる。
ちなみに重さ(実測)は以下の通り。
 ・Leica IIIf Elmar50F3.5    557g
 ・Contax II Sonnar50F2    747g
 ・CASCA II Culminar50F2.8 764g

並べてみて思うのは「ライカって本当にコンパクト、それに比べてCASCAはなんと
大きなことか」である。
Contax IIもかなり大きいと思っていたのだが、こうしてみるとコンパクトなサイズ
にとても1936年発売とは思えないほどのメカニズムである。

さて、この3台をなぜ並べてみたか?である。
CASCA II型で撮影してみると、以下のようなことがよく起こるのである。

Casca4_20100321

Casca5_20100321
 CASCA II Culminar50F2.8 1/500 F=1:5,6

先ほどのチョコ君の画像も足がちょっとキレている。
CASCAのファインダーで構図を取ると、どうも下が切れることが多い。
さてはて、なぜなのか?と考えると以下のようなことが原因なのでは?という
ことに気がつく。

Casca2_20100321
 Contax IIとCASCA IIのレンズ中心とファインダーの高さの違い

見た目を比較すると、Contax IIと比較してもCASCA IIの方がかなり高く見える。
レンズ中心からファインダーの中心までの高さを実測すると以下の通り。
            水平距離     高さ
 Contax II       37mm     30mm       
 CASCA II       37mm     38mm
意外にも水平距離は同じであった。
しかし、高さは8mmも高いのである。
手馴れたメーカーであれば、ファインダーの構造を微妙に工夫してレンズ中心
との違いを埋めるであろうし、CASCAはブライトフレームがあるのであるから
50mmにおいても高さ補正と近接撮影時の枠を出しておくのが筋のような
機がする。
それをしなかったというのが、やはり「初めてカメラを作ったメーカー」である
ゆえなのであろうか?

CASCA IIで撮影をしていると、他にも気がつくことがある。
 ・シャッター速度設定のスライダーが、撮影時にカメラをグリップすると
  動いてしまうことがある(意外に多い)
 ・丸っこいボディに正面の板がツルツルして手が滑りそうになるが、
  持った感触は妙に心地よい。
 ・巻き上げノブがアルミ製&ギザが浅いのでフィルムの巻上げが
  結構辛い(指の筋がジンジンしてくる)
  また、それはフィルム巻き戻し時も同様で、1本撮影して巻き戻すと
  「もう今日はこれくらいにしておいてやろう(疲労)」となる。
 ・巻き上げなどをしていると、ヘリコイドに知らないうちに手が触れてしまい
  再度撮影するときに「あれ?」となる。
こういうことについては、CASCA IIの量産が続いていれば改善されたのかも
しれないと思うと興味深い。

もう70年前の少数生産カメラの違いを、こうして検証するのは楽しい。
現物を所有しているゆえの特権であるのかもしれない。

さて、「おそらくCASCA IIで玉電を世界初撮影(笑)」の成功したものを
UPする。

Casca6_20100321
 CASCA II Culminar50F2.8 1/1000 F=1:5,6

残念ながら、逆光で撮影したせいか?空の青さがあまり出なかった。

Casca7_20100321
 CASCA II Culminar50F2.8 1/500 F=1:5,6

玉電の沿線には、古くからの住宅街もあって、公園にもこのような面白い
ものがあって楽しい。
クラカメ+銀塩での撮影を、これから桜の季節を迎えてもっと楽しもうと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.03.14

EKTAR35F3.3

幸運なことに、コダック エクトラには広角レンズがある。
エクター35F3.3である。

Ektra351_20100314_2
 Ektar35F3.3を装着したEKTRA 標準レンズよりコンパクトで使いやすい。

F=1:3.3とは少し中途半端な感じがしないでもないが、エルマーやズマロンの
F=1:3.5よりは気持ち明るいというのが、一種のステータスだったのだろうか?
もっとも、エクトラの時代にはZeissからあのビオゴン35F2.8が出ていたのだから
多少f値を明るくしても・・という気がしないでもない。

ところで、エクター35F3.3というレンズは、マウント後部が非常に出っ張っている
レンズである。

Ektra352_20100314
 レンズを外したところ。 フランジバック部が出っ張っているのが判る。

マウント後部がこれだけ出っ張っているので、マウントアダプタによるデジタル
対応が出来なくなっている。
このため、ほとんどのレンズをデジタルで使用する私には珍しく、エクトラのレンズは
ほぼ100%銀塩で使われることになる。

しかし、このレンズ後端の出っ張りは面白いのである。

Ektra353_20100314
 EKTAR35F3.3をマウント側から撮影。 レンズ本体は奥の方にある。

マウントから後ろに出っ張っているレンズは、スーパーアンギュロンやビオゴン
のように「レンズ後端のレンズが出っ張っている」ものである。
しかし、EKTAR35F3.3はレンズ後端はほとんどマウント部のところにある。
この出っ張りは「フランジバック部の反射防止のカバー」なのである。

Ektra354_20100314
 ボディに装着してマウント内部の状況を撮影したところ。
 シャッター直前まで、レンズ後部の「反射防止部」が来ているのが判る。

ボディに装着してレンズ後部の状況を見ると、シャッター直前までカバーして
反射防止をしているのが判る。
35mm版カメラで、レンズ自体がフランジバック部まで反射防止している例は
私が知る限りはエクトラのEKTAR35F3.3くらいである。
(注:レンズ交換式の場合)

Ektra355_20100314
 EKTAR35F3.3のバリエーション

私の手元には、2種類のエクター35F3.3がある。
右側の1本はもう15年くらい前に購入したもので、左の1本は最近購入したボディに
装着されていたものである
1941年の広角レンズであるから、きっと高価であったと思われるので、数は
少ないはずなのに、たったの2本を所有しただけで違うバリエーションが出てきて
しまうのが面白い。
右側のものは、距離計連動範囲のストッパが無く、面白いことにレンズ製造年代
の刻印がない。
他にも、細かく見ていくと違いがある。
しかし、なぜそのようなバリエーションがあるのか?は、文献などがないので
理由は不明である。

Ektra356_20100314
 KODAK EKTRA 1/500 EKTAR35F3.3 F=1:5.6 

Ektra357_20100314
 KODAK EKTRA 1/500 EKTAR35F3.3 F=1:5.6

ようやくポジで撮影することができた。
青い空が蒼く写る、この感覚が好みなのである。
銀塩でしか味わえないというこの感触は、デジタル全盛の時代に「たまには原点
に戻れ」という戒めなのかもしれない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.03.07

KODAK EKTRAの話(3)

カスカII型で面白いことがあったりしたが、エクトラのマガジンねたの続き
である。

しつこいようだが、この日記を読んだ方がどのようなアクションを起こしても、
それは「自己責任で行うものであり、筆者は一切の責任を負わない」ということを
理解して欲しい。

Ektra7_20100306
 いよいよマガジンを外す。ボディ正面の2個のネジを回す。

ここまででもかなりの説明と確認をした。
前日記を読んだ人の大半は、きっとその段階でエクトラのマガジンを外すことを
止めるに違いない。
それをも克服した根性のある人は、ボディ両側にあるネジを同じように回して
いよいよマガジンを外す。
両側を同じように!を強調するのは、以下のような理由がある。
・片方ずつ回すと、ボディとマガジンが微妙に傾いたり、ガタが出てしまう
 ことにより、前述の勘合部分の角度が狂ってしまうことがある。
・同じように回すということは、マガジンをボディと平行に後ろを抜くことが
 できるのである。
 平行に抜くということは、軽く後ろに引いたときに「あ!これはマガジンが
 外れない!(大汗)」となったときに、脱着を断念して元に戻すことが
 できる可能性が高いのである。
 戻すことも出来なくなれば、それはもう最悪である。
ネジが完全に外れたところで、静かにマガジンを後ろに抜く。

Ektra13_20100306
 無事にマガジンを外したところ。ここまででかなり精神的疲労が・・

何もトラブルがなければ、このようにマガジンが外れる。
考えてみると、他の「ひょっとして勘合部分の調子が合わないかもしれない」
マガジンと交換することは、100害あって1利なしなのだ。
要するに、エクトラのマガジン脱着は「儀式の伝承」のようなものである。

そう「オレはエクトラを使っているんだ!(汗)」という満足感だ。
確かに、こういうカメラを所有しているのであるから、こういう「一種の恍惚感」
は重要ではある。
ただし、リスクは大きい。
私のように、定期的にチェックや整備が必要な個体を所有していない限りは
お正月に行う儀式として継承するくらいが無難だと思う。

装着はこの逆をやるだけである。
何もトラブルがなければ・・元に戻る。
さて、いよいよ「トラブル事例」である。

Ektra8_20100306
 装着してみると、なんと巻き上げが出来ない!原因は勘合部分の傾き。

今回の一連の動作を撮影し、さて・・とマガジンを戻してみたら巻き上げ
が出来ない。
私の場合、さすがに17年も使っている(遠い目)なので、すかさず「これは
いかん!(汗)」と気が付き、だましだましマガジンを外した。
実は、このような状況になると、通常はマガジンは外せないし、ちょっとでも
固く引っかかっているようならば、マガジン下部を分解して外すことを
お勧めする(もっとも、奨められても・・どいう人は多いだろうが)
外してみると、このように勘合部分が傾いていた。
こういうときの対処としては、本体側の勘合部分を回してシャッターをチャージ
し、レリーズして正しい位置に戻すことになる。
正しい回転方向はラチェットがきちんと作動(軽く回る側)であり、間違っても
反対に回してはいけない。

私がこのときに行った作業の失敗は、以下の通りだ。
本来の装着手順:
 ・マガジンをはめてネジを「マガジンが動かない程度」に固定。
 ・ロックのスライドをUNLOCKにスライドする。
 ・さらにマガジンのガタがないかを確認し、ネジを回す。
今回の失敗した手順:
 ・マガジンを装着してネジをカッチリとするまで回す。
 ・あれ?固いぞ・・と思いつつUNLOCKにスライド。
微妙なことだが、こんな些細なことでEKTRAがきちんと動くか、動作不能に
なり、最終的には故障(破壊?)となってしまうのである。
エクトラを使う限り、多少のトラブルは発生する。
そうしたときの対処に慣れて、正しいアクションを学んでいくことがクラカメの
楽しさでもある。

さて、なぜこのようなトラブルが発生するのか?
それはKODAK EKTRAの機構に原因がある。

Ektra9_20100306
 35mm版のマガジン交換機 Rollei SL2000Fのマガジンの勘合部分

同じマガジン交換式のローライSL2000Fの勘合部分である。
マガジンを脱着する際には、マガジンは複雑な動きをして本体勘合部分から
スライドして外れる。
そして、本体側も勘合部分はバネで上下し、柔軟に合わさるようになっている。
ちょっと機械的知識がある人ならば「軸を接続して回す場合は、きっちりと精度
を出してガッチリ固定するか、ルーズな接続を許すための緩衝機構を入れる」
と考えるべきである。
そればエクトラにはないのである。

では、勘合部分の不整合によってどこが具体的にダメージを受けるのか?

Ektra11_20100306
 本体側のフィルム巻取り部のギアを外したところ。勘合部分のラチェットの
 部品(黒いものと細い線バネ)が見えるだろうか?

エクトラは、マガジン交換を可能にするためか?各部に多くのラチェットを使用
している。
その中で、もっとも破損しやすいのは、当然もっとも力がかかり、かつマガジンの
脱着により衝撃を受けるこの部分のラチェットである。
シャッターの不調、マガジン脱着時の衝撃・・・などにより、ラチェットがズレて
角度が変わってしまうくらいなら「ちょっと冷っとする」くらいで済むが、この細い
バネ(がかなり頼りなくラチェットを押している)が外れたり、最悪はラチェットの
金具の先端(かなり尖っている)が欠けてしまい、ラチェット機構そのものが
作動しなくなってしまうことがあるのだ。

Ektra10_20100306
 エクトラのラチェットの中で、大きくて判りやすいのが巻き上げ部分のもの

マガジン後部のレバーと連結されているラチェットが最も判り易いので
画像をUPしておく。
(くれぐれも「見て見たいから」と分解はしないように!)
機構としては妥当ではあるものの、強度的に不安な作りでそれを実現している
ところが、コダック エクトラの危ういところなのである。

とはいえ、構造を理解して、壊すようなことを避けて使えば良いだけのことである
から、ネガティブに考える必要はない。
今時購入できるエクトラは、なんらかの整備はされているであろうし、壊れたら
修理してくれるところもある(修理代は本体価格を越えるにしても)ので、積極的
に撮影に供することは可能であるとは思う。

Ektra12_20100306
Ektar90F3.5 F=1:8 ネガをスキャン

90mmを使った例である。
残念なことに、このときは空が微妙にガスっていたので、蒼くならなかった。
いずれ、ポジで再トライしたいものだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

61年ぶりに

エクトラのことをUPするために、あれこれと確認するついでに、CASCA IIと戯れ
ていたときにそれは起こった。

Casca1_20100306
 なんと!後蓋の皮が剥離した!

あれ?なにかゴワゴワするぞ・・・と思っていたら、あっさりと皮が剥がれた。
なんとも簡単に・・・である。
撮影中に剥離したら大変なことになっていたかもしれないが、室内でいじって
いてなら問題はない。
どうやら、接着材はエマルジョン系のものを使っていたようである。
要するに「木工ボンド」だ。
これでは、金属との接着はやや心もとない。
ただし「再度剥がすつもりであれば」この接着剤の方が皮を痛めないので
有効ではある。
ゴムのり系のものは昔からある(シャッター幕などはこれで固定)ので、なぜ
この接着剤を使ったのかは??であるが、CASCAの作りのほんの一部が
理解出来て楽しい。

Casca2_20100306
 これでダイキャスト部がしっかりと確認できる。
 カシメ止めだれた部分が良く判る(ヤスリ仕上げの跡もの残る)

CASCA IIは1949年製とのことである。
敗戦から4年で、よくもまあこれだけカッチリとしたダイキャスト製品を製造
したものだ・・・と感心する。
裏側からカシメ止めされている部分が良く判るのだが、なぜか一部分だけ
仕上げのヤスリ目が残っているのが面白い。
当時の職工さんは、どんな工作をしたのだろう?と想像が膨らむ。

Casca3_20100306
 カシメ止めの表側。

ヤスリ目があるのは、どうやらフィルムマガジンを押さえる部分である。
他の部分は綺麗になっているのに、ここだけなぜヤスリ?
まあ、どうでも良いことなのであるが、製造から61年が経過して、こういう
ところが見られたことが楽しい。

たかがカシメの一部をヤスリで修正したところが気になるくらいに、CASCA
のダイキャスト成型は優れているのだ。
同じ時代の他のカメラの作りと比較すると、今までと違ったクラカメの楽しさ
が発見できそうな気がするのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.03.06

KODAK EKTRAの話(2)

KODAK EKTRAの話の続きである。

Ektra2_20100306
 EKTRAのマガジンを外したところ。こんな単純なことにスリルが存在する。

エクトラ関係の話で必ず出るのが「マガジン交換機ではあるが、それをやると
調子が悪くなるのでやらない方が良い」というものである。
結論から言ってしまうと「それは正しい」のである。

しかし、実体はそのように単純ではない。

エクトラは微妙なことで調子が狂うことがある。
実はこれからお話する構造上の問題があるからなのだが、その不調の原因
を解決するためには、マガジンを外さないと話が始らないのである。
考えてみると「マガジン交換式のカメラ」なのであるから、それは当然のこと
ではあるのだが、製造後70年近くを経過したクラシックカメラに、このような
アキレス腱が存在することが、21世紀のメカ好きを悩ませることになるとは
当時の設計者は考えもしなかったことだろう。

さて、ここから筆者の10数年に及ぶエクトラ経験によるマガジン脱着の手順
とトラブル事例の話をする。
参考にしてもらっても良いのだが、この話は「あくまで筆者の経験と知識」
であり、これがメーカーや権威者(誰だ?)の技術情報ではないということ
を良く理解して欲しい。
ここに出て来ることを、どのように生かすのか?は読んだ方の自己責任に
よることを理解しておいて欲しい。

長い前置きはこれくらいにして、マガジン脱着の手順に入る。

Ektra3_20100306
 外したマガジンと本体の関係。勘合部のスリットが平行になっていること
 に注意!

上がマガジン、下が本体である。
勘合部分はマガジンが凸、本体側が凹である。
本体側のギアは、このまま上部にある制御機構に繋がっている。
制御をするのであるから、カッチリとしていそうなものであるが、この状態では
フリーになっており簡単に動いてしまう。
後で話しをするが、エクトラはマガジン脱着を可能にするため、あちこちに
ラチェット機構がある。
この部分もそうなのであるが、ラチェットであるから「片方には回らないし、片方
には楽に回る」のである。
そう、巻き上げ側には平気で動いてしまうのだ。
マガジン側は一応はロックがかかっている(これも後述)
カンの良い人は判ると思うが、安易にマガジンを外してしまうと、ここがちょっと
動いてしまうだけでも元に戻せないし、ヘタをすると壊してしまうのだ。

ここまでお話すればもう判るであろう。
エクトラのマガジンの脱着は「この勘合部分の平行をキッチリと守って外して
また戻せばよい」のである。
文字にすると簡単だが、実践がなんと難しい内容であることか。

マガジンを外す場合は、シャッターはチャージされていない状態が良い。
やってみると、どちらの状態でも脱着は可能なのであるが、前述のように
本体側にシャッターのテンションがかかった状態になっている場合、あまり
調子の良くない(整備状態の悪い)エクトラは、この勘合部分が微妙に
傾いていたり、軽い振動でレリーズしてしまったり・・とさんざんなのである。
まして、脱着中にレリーズしてしまったら・・これは大変な事態だ。

Ektra4_20100306
 シャッターがチャージ状態。速度は1/100に設定されている。
 フィルムカウンタしたの小窓がチャージの表示(チャージ済:黒)

これがシャッターチャージが完了している状態である。
シャッター速度は1/100、チャージ表示が黒になっている。
この表示ははっきり言って判りにくい。
ハッセルのように、白と赤にすれば良かったのに・・とは誰もが思うことで
あろう(今更言っても仕方がないのだが)
シャッター速度がかなり重要な判断基準にもなるのだが、困ったことに
1/25にしているときには判断しようがない(笑)
こういうところも、トラップが仕込まれているのである。

Ektra5_20100306
 シャッターを切った状態。シャッター速度は1/25.チャージ表示は赤。

この状態がシャッターを切った(リリースした)状態である。
シャッター速度は、どの速度域(1/25~1/1000)でも1/25になる。
これがまたエクトラの機構的面白さなのだが、今回はそれには言及しない。
この状態であることを確認して、次の手順に入る。

Ektra6_20100306
 マガジン下部分のスライダーをUNLOCKに動かす。

次はマガジン下部分のスラーダーをUNLOCK側にスライドさせる。
この動作により、マガジンの本体側に金属の薄い幕が出てカバーされると
同時に、内部にある金属ブロックが押されて巻き止めがかかる。
この構造は、10数年前に幸運にも「水没エクトラ」を廉価に入手して、本体
とマガジンを分解して内部機構を調査した結果判ったことだ。
ところで、この巻き止め機構なのだが、実体験と調査の結果、案外ロック
が緩くて巻きがかかってしまうことがあるのだ。
そうなると、上述した勘合部分に矛盾が生じることになる。
ここもまたトラップである。

長くなったので、続きはこの次のUPで述べる。

Ektra1_20100306
KODAK EKTRA Ektar35F3.3 F=1:8 ネガフィルムをスキャン

エクターの描写で好きなのは「青い空が蒼く写る」ことである。
この魅力のために、苦難の道を10数年なのである。
この写りを見ると、エクトラ維持の苦労がかなり癒される。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.03.05

KODAK EKTRAの話(1)

うやむやのままに、Rollei SL2000Fシリーズの撮影をしないまま、この話題へと
移行していく。
要するに、ブログなのであるから「気分次第」なのである。

田中長徳さんの名著「銘機礼賛」を読んで、クラカメの世界に落ちた人は多いと
思う。
私は、Leica IIIf、Contax IIを実用品?をして購入してから、この本を購入し、
ALPAを買ったのである。
この本の中で、私がハマってしまったものは以下のようなものだ。
 ALPA
 KODAK Ektra
 Rollei SL2000F
 
実際に入手したのも、この順番である。
KODAK Ektraは確か1993年くらいに入手したはずである(やや曖昧)

Ektra2_20100305
 今でもしっかりと稼動しているEktra。しかし、その道は苦難の連続。

私が最初に使ったEktraは友人のものであった。
銘機礼賛を読んだ友人が、海外から購入したものの「そのあまりに違う
使い勝手」に驚き、届いてすぐに私のところに持ってきて「使ってみて
ください(涙)」となったのだ。
そして、彼の予想は的中し、試験撮影時に・・・・
(この話は凄く面白いのだがやらないことにする)
このような苦難の少し後に、私のエクトラはやってきた。
しかし、受け取った時点で故障して動作しなくなっていた。
そんなとき、私は仕事では決して見せないパワーを発揮し、巡り巡って
修理名人に「私はやってあげられないが、貴方なら出来る!」というドラマ
のような逸話が展開し、徹底的にエクトラのしくみを教わることで自分で
トボトボと修理しながら使用し、故障しては修理、また壊れては修理・・
という修行がなんと!5年以上も続き、そして最期に「エクトラ修理名人」
の最終メンテが入ることにより「真の快調さ」を手に入れたのである。

そして、それから10年以上・・・
今も快調である。
長く続いた平穏な日々。
本当に、コダック エクトラは私を鍛えてくれた。

さて、思い出話はともかく、KODAK Ektraにまつわる各種の話について、
私の知識と経験を元に話をしていきたい。
なお「正しい歴史」を学びたい人は、海外の文献を見るか、日本国内でも
きっちりとした書籍を探した方が良い。

まずは「Ektar50F1.9のグルングルンぼけ」である。
たまに「Ektar50F1.9の特徴は後ボケがグルングルンになる」ということが
述べられているものを見かける。
それはそれで正しいことなのだが、後ボケが暴れるタイプのレンズは、別に
Ektar50F1.9には限らない。
タンバールやノクチルックス50F1.2だって結構グルングルンである。

たとえば、このような例がある。

Ektra3_20100305
 定番モデルのチョコ君。Ektar50F1.9 絞り開放

このように撮影するとエクター50F1.9でも後ボケはおとなしいものだ。
要するに「グルングルンボケはレンズの個性というよりも、撮影にシチュエーション
により発生」するのだと思っている。

では、Ektar50F1.9でグルングルンボケを再現してみよう。
私がレンズテストをするときに「これは後ボケが暴れる」というテストを行うために
選ぶシチュエーションはこのようなものである。
 ・被写体はやや暗めになっている
 ・背景は細かくチラチラしたものがある(木漏れ日など)
実践してみるとこのような感じだ。

Ektra4_20100305
 KODAK Ektra Ektar50F1.9 絞り開放

Ektra5_20100305
 KODAK Ektra Ektar50F1.9 絞り開放

このようになる訳である。
ボケ味をどう使いこなすか?はレンズ選択もあるが「特性を生かした背景を
選ぶ」というのは、私のような素人が口にしなくても言われていることである。
私自身は、Ektar50F1.9を含むエクトラのレンズは、ボケ味というよりも「快晴の
ときに空の蒼さがクッキリとする」だと思っている。
もっとも、日本の気候でその状況にうまく出くわすのが難しいのだが。

Ektra1_20100305
 17年を経過し、KODAK Ektra軍団が強化された。

快調な私のEktraではあるのだが、製造されて約70年が経過、私の手元に
来てからも17年近くが経過、考えてみると、私の手元にある期間だけでも
現代の電気カメラでも寿命になるくらいの年月だ。
さすがに1台では不安なので、もう10年前くらいから2台目を探していたが、
ようやく廉価なものを入手することができた。
2台あると、あれこれと比較も出来る。
今後、マガジン着脱の話やシャッターの話、レンズの話をしていく予定で
ある。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2010.03.02

Rollei SL2000Fのバッテリーパック(復活)

Tue4_20100302
 SL2000Fシリーズのバッテリーパック。 右下がオリジナルのSl2000F用

10年くらい前に無くなってしまい「オリジナルの状態にした」と思っていた
SL2000F用のバッテリーパックをようやく入手した。
3003用はNi-Cd専用になっているのだが、SL2000F用は単3タイプは
何でも入れることが可能である。
eneLoopがある21世紀には、こちらの方がエコなのだ。

ようやく「ココロの隙間」が埋まった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年2月 | トップページ | 2010年4月 »