私の性格は、どうも「知りたい」と思うと、あれこれと探したり調べたりを地味に
続けてしまうもののようだ。
大したことではないのだが、確か去年くらいに「マニア待望の94年式が発売」
というものがあった。
なんじゃそれ?と思う人が多いだろう。
私が少年の時代から「日本軍の世にも不思議な拳銃」として本には出ている
ものの、不思議な外観は書籍から判るものの、中がどうなっているのかが??
のまま現在に至っているものだ。
う~ん、ちょっと買ってみたい・・・
そうしたら、さらにオークションに、小さくてカッコイイものが出ている。
「ベビー南部」である。
これはかっこいいなぁ。
書籍は購入するとして、現物は手にはできないがモデルなら入手出来る。
ということであっさりと購入。
それはいいのだが、前から不思議に思っていたことはさらにある。

なぜ上下の銃を元にすると真ん中のものになる??
これまた少年時代からの拙い知識であるが「南部拳銃はルガーP-08を
元にして・・」というものである。
しかし、あまりにメカが違いすぎないか?
最近の月刊Gun(ああ、10年ぶりくらいに買った)によると、外観的や一部の
構造はP-08であるが、ロッキング機構(ショートリコイル)は、モーゼルなのだ
そうである。
で、思い出した「あ、屋根裏からモーゼルが出てきたじゃないか!」
そのモーゼルは高校生のときに友人が壊れたものをくれたのだが、私が直せる
訳でもなく、いつしか屋根裏で30年以上・・・
もう1台はP-08があればいいのか!とyahooでさっそく落札。
(おいおい、なんかハマってないか?)

マルシンのP-08
かなり実物に忠実なマルシンのP-08である。
分解(フィールドストラップ)は極めて簡単である。
100年以上前の機械とはとても思えない。
結構複雑なメカなのに、グリップ内にあるスプリング1本で作動する。
もっとも、そのためにかなり複雑なテコやらリンクがある。
南部拳銃は左側に平行にスプリングがある。
これはあくまで私の予想であるが、グリップを細くする(日本人向きに)に
グリップのスプリングを平行に横に置くようにしたのではないか?
そうすれば、メカはかなりシンプルになる。

分解はこの2パーツを外すだけ
フィールドストラップは、バレルを少し押し下げ、ロッキングボルトを回し、
トリガープレートを外すだけだ。
こういうシンプルな構造を考える人は頭がいいのだろうなぁ(遠い目)

実物と構造を変えた部分が破損・・・
操作して遊んでいると動かなくなった。
それで分解したのだが、開けてみるとストライカーをシアーが捕まえる突起が
ボッキリと折れている。
書籍で調べると、これはモデルガン的に変更されている部分だ。
しかも、実物は鉄なのにモデルガンはアルミ製なのでボッキリである。
まあ、どうせダミーカート仕様だからいいか。
ところで、前から??だったことがある。
P-08はなぜにこんな複雑なトグルジョイント(尺とり虫)構造なのか?

ブローバック開始(ショートリコイル)
モデルガンがあるので動かして確認する。
弾丸が発射されると、ショートリコイルが開始される。
すると・・

背後にある突起に当る。
背後にある突起に当る。
この突起はフレームについている。
ここでちょっと粘り・・・

突起をテコの原理で押して、ジョイントとバレルごと動く。
フレームの突起をテコの原理で押しながら、ジョイントも下がるとともにバレルも
後退していく。

完全に開いた状態
こうして排莢を完了する。
このしくみ、すごく巧妙な感じがするが、反面きちんと動作させるのは大変だと
思うのだがどうなのだろうか?
P-08の元になったボーチャートピストルは、背面の丸い部分の中に沿ってレバー?
が動いてこの動作をしていた(らしい)が、P-08はこの突起とジョイントのテコの原理
だけでやっているのだから大したものである。
機械の知識がちょっと増して嬉しい。
さて、次である。

ハドソンのモーゼルミリタリー・・・ちょっと悲しい事実
屋根裏で30年近く醸してきたモーゼル。
モーゼルもすごく匠な構造で、分解は背面のラッチをポチッと押すだけで
全パーツがボロっと出てくる。
完全なユニット構造である。
う~ん、まるでCONTAX II型を見ているようだ。
しかし、こちらの方がカメラよりはるかに昔のものなのである。
ドイツ人凄い!
で、ここまでやって気が付いた。
あ・・・・ハドソンのミリタリーはショートリコイル機構がないんだ・・・
まあ、それらしきものが見られたからいいか。

いつの間にか増えた14年式
きれいなベビー南部を分解するのも・・と思った訳でもないのだが、なんとなく
廉価な14年式を入手してしまった。
しかし、動作がまったくほんとにおかしい。
ということで分解してみる。
フィールドストラップは、トリガーガードを外すときにピンを抜かないといけない
点以外は実物とほぼ同じだ。
P-08から見るとかなり部品は少ない。
見ていると、確かにバレルの形はそっくりだし、ボルトも尺は取らないものの
長くしてそのまま後ろに下がるようにしたようにも見える。
ハドソンらしく、問題のモーゼルの影響?のショートリコイル機構は省略(涙)
されているので不明・・
注:この製品はN-1です。
改良型のN-2,3はしっかりとショートリコイル機構があります。

驚愕の事実!ストライカーの形状が変?
この14年式、ストライカーがまったく動かないのである。
分解してびっくり!
なんと!太すぎて中で詰まっていた」のである。
約40年を経過して発覚した事実・・・

ストライカーを修理
ストライカーを切って削って・・・修理完了。
しかし、壊れていたのはここだけではなかった。
・安全装置の軸が中で曲がっていた。
=>バレルの欠き取りが足りなかった(ガリガリと削る)
・シアー後端部がぜんぜんストライカーに当っていない
=>曲げたり削ったり
・ボルトが渋い
=>あれこれと調整
う~ん、何やってるんだ? =>自分

問題のストライカーとシアーの接触部分
日本軍の不思議な規則がある。
拳銃の携帯方法なのだが、
・大小2つの巾着袋が支給
・射撃しないときには、弾丸を抜いた銃本体とマガジンを袋に入れる
え?それって咄嗟のときに困らないのか??
しかし、この構造を見て納得。
これっぱかしの引っかかりでは、ちょっとした衝撃でストライカーが打撃
してしまう可能性が否定出来ない。
暴発で死ぬのは嫌だよね・・・・
しかし、戦場で敵に襲われて反撃出来ないで戦死・・・も悲しい。
こういう武器を支給されて戦場に行った方々の気持ちはどうだったんだろう?

南部拳銃のストライカーとシアーの接触部分
ちなみにベビー南部の同機構部。
こちらもチラリとしか接触していない。
考えてみると、南部拳銃は1903年開発である。
自動拳銃のご先祖様だ。
ベビー南部はこれでも「当時の常識」といえなくもないが、14年式は
20年以上後の拳銃なのに、まだ同様の機構というのはどうなのか?

結局「資料」という口実でなんだかんだと増殖
色々なことが判った。
しかし、21世紀になって「初めて自分でモデルガンを買う」ことになるとは
思わなかったなぁ(遠い目)。
ここまでやって気が付いたのだが、南部拳銃=>14年式の系譜はなにか
見えたのだが、94年式のまか不思議な構造は??である。
やはり、同年代(1934年)のドイツの拳銃の影響があるのだろうか?
考えてみると、あのワルサーP-38もそろそろ登場の気配(その前タイプの
APはあった)でもあるし、影響はきっとあるのだろう。
しかし、それならなぜにああいう摩訶不思議なものが出来たのか?
日本人、こういうメカを作るのが苦手なのだろうか?
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